格安車検、スピード車検ってお得なイメージもあるけど大丈夫なのか? と思っている人も多いはず。
新車の場合は登録から3年後、それ以降は2年ごとにやってくるのが車検、車両検査だ。ほとんどのドライバーにとって、車検はお金のかかるもの、というイメージではないだろうか。
だがこれは、間違った考え方かもしれない。というのも、確かに車検時の費用はそれなりにかかるものだが、安く済ませようとすることもできる。しかし車検で手を抜くと、後々トラブルの原因になったり、むしろ費用が嵩むことになることも多いのである。その理由をこれから説明しよう。
まず車検が高いと思う理由の一つが、法定費用だ。これは車検時に収めることが法律で定められている税金や保険などの費用のことだ。重量税や自賠責保険、検査手数料などは車種によって自動的に決まってくる。これはディーラーでも街の整備工場でも格安車検業者でも同じ金額だ。
そして車検をディーラーや整備業者に依頼する場合は、検査前に点検整備を行うことが義務付けられている。これが24ヵ月点検と言われるもので、エンジンや足回り、ブレーキ、灯火類などに不具合がないか、点検して、問題があれば調整や部品交換することになる。
つまり24ヵ月の法定点検は、基本料金が業者ごとに決まっていて、整備が必要であれば調整代や部品交換代が追加されるのである。
5年目まではメンテフリー、そこから先が問題だ
車検で整備の手を抜くことは、不可能ではない。スピード車検や格安車検を実施している業者の中には、最低限の点検を済ませるだけで車検をパスさせているところも存在する。そうやって回転率を上げれば、点検整備を格安に請け負っても利益を上げられるからだ。
これはユーザーにとってもメリットがあるように思えるかもしれない。早くて安いのであれば、助かると感じるからだ。しかし、そうした手抜き整備はジワジワとクルマを老化させていく。
国産車なら新車から5年程度は、ほとんど車検時のメンテナンスは必要ない。足回りやベルト類、冷却水やブレーキ周りは、よほど走行距離が多いかハードな走りをしない限りは、機能を維持してくれる。
ディーラーに車検を任せていたとしても、2回目の車検までは基本料金程度しかかからないことも珍しくない。しかし、そこまでノーメンテ(オイル交換は定期的に実施する)で過ごしたとすれば、そこから先は色々と手入れが必要になってくる。
5年でクルマを買い替えるような使い方であれば、その時点で乗り換えるから構わない、という考え方もある。メカに弱いオーナーの中には、古くなって壊れるのが不安なので3年ごとに新車に買い替える、という人もいる。金額的には出費が大きくなっても、クルマに乗っている時に故障したら、と思う不安を解消する安心料と思えば、その人にとっては価値ある出費なのである。
乗り続けていたら7年目、9年目の車検は見積もり時に結構な部品交換と工賃が計上されることも珍しくない。これは新車への買い替えを進めるためのディーラー側の作戦だという部分もあるけれど、機械は使っていれば摩耗は避けられない。
そしてディーラーは摩耗限界まで使い切ってから交換するようなメンテナンスはできない。それは故障と紙一重の維持管理となって、ユーザーに迷惑をかけてしまうことにもなりかねないからだ。
次の車検までに部品交換や修理をすることになれば、工賃も余計にかかるからその前の車検整備時に交換しておいた方が安心だし、安上がりということになるのだ。
1つの部品の劣化が他の部品に悪影響を与えることも
それにギリギリまで部品たちを酷使した分、周囲の部品にもダメージが及ぶこともあるのだ。例えば冷却水はスーパーLLCなら7年間は無交換でOKということになっている。しかし最近の日本の猛暑はこれまでの想定以上に部品を劣化させていく。
消泡剤などが劣化してエンジン内で冷却水が泡立つようになると、エンジンから熱を吸い取る能力が低下する。泡は気体が混ざっているので熱伝導が低くなってしまうからだ。すると水温は上昇していないがエンジン内部の温度は上昇していくことになってしまう。
これが長期間に及ぶと、ジワジワとエンジンいダメージを与えることになる。エンジンオイルの温度は上昇して、油膜切れを起こしやすくなる。同じオイルを同じ交換サイクルで使用していても、徐々にエンジンの摩耗は進み、スラッジも増えていくことで油圧系統に悪影響を与えることもある。
エンジンだけじゃなく、変速機や足回り、ブレーキ、クルマの可動部分のほとんどすべてに、この当てはまる。クルマを大事に長く乗りたいなら、定期的なメンテナンスは欠かさないことだ。