こんな運転でクルマは壊れる、壊れない?
クルマは数万点という、たくさんの部品で構成されている。そのためクルマの乗り方次第で、クルマや部品の寿命が縮んでしまったり、伸びるとこもあり得る。
けれども最近のクルマたちは、ズボラなドライバーがいることも想定して開発されている。だからそれほど神経質になることもない。
クルマが停止した状態でステアリング操作を行う「据え切り」はタイヤのブロックを捻ることになり、表面が傷んでしまう原因になる。しかし確かにタイヤは傷むが寿命を縮めるほどではない。これはタイヤをローテーションすることで対策できるものだ。
ただし最近のクルマは車重が重くなっているから、2t近い車重のSUVなどは、これまでより小まめなローテーションをした方がタイヤのためにはいいだろう。ボディサイズが大きいため、据え切りする機会も多いだけに、半年に一度はローテーションを行いたい。
切り返しなどで前後進を繰り返すスイッチバックと言われる操作は、ATにとって負担が大きいと言われる。本来はしっかりと停止してからRレンジやDレンジへのシフト操作を行なってやりたいところ。しかしこれも、変速機メーカーや自動車メーカーは何万回もの耐久試験を行なって、微低速時にはスイッチバックしても壊れないよう対策している。
後で述べるが冷間時の操作を丁寧にすることと、5万kmごとにATFを交換することの方が、ATに対してはよほど重要だ。
始動直後に加速させるのはNG
燃料消費を少なくさせるには、無駄な動作は減らしたい。そのために始動後にアイドリングを続ける「暖気運転」はNGとされている。エンジン始動直後からすぐに走り出すように指導している自動車メーカーもある。環境保全のためには排気ガスを減らすために、そうした配慮を行う必要があるのは理解できる。
しかしエンジンのためには始動直後には負荷を抑えた暖気走行をした方がいい。
たとえ冷間時にもサラサラの粘度を誇る超低粘度のオイルを使っていても、金属同士が摩耗することを抑えることはできない。
特にエンジンよりも複雑で繊細な制御を実現している変速機にとっては、冷間時に手荒な操作をすることは寿命を極端に縮める行為となる。冷間時の手荒なシフト操作や急加速は油圧不足による
自動車メーカーにとっては、燃料消費よりも自社ブランドが環境に悪影響を与えているのを避けたいし、エンジンも適度に消耗して一定のサイクルで新車に買い替えてもらった方が有難いのだ。
オイル交換をサボるのはNG
ディーラーで推奨しているオイル交換のサイクルは最低限の頻度と考えるべき。クルマがいつまでも好調を維持しているとユーザーは買い替える気が湧かないから、10年10万kmを超えたら燃費が低下したり、調子を崩した方が自動車メーカーやディーラーにとっては都合がいいこともあるのだ。
今乗っているクルマを大事だと思っている人は、オイル交換は半年に1度は行おう。オイルは一度エンジンに注入されて走行すると、空気と攪拌されながら加熱されるため酸化が進んでしまう。
その後はあまり乗らなくても、一定のスピードで酸化は進み潤滑性能が低下していく。だから走行距離が5000kmに満たなくても、エンジンのためにはオイルは交換した方がいい。
オイル交換を自分で行える、あるいは知り合いの整備工場などでやってもらえるなら、エンジンオイルをまとめ買いすれば、オイル交換のコストは大幅に抑えられる。オイル交換の度にカー用品店で4Lのエンジンオイルを購入したり、量り売りのエンジンオイルを利用している人も多いが、これは割高。
同じ銘柄でも4L缶と20L缶では、1Lあたりの価格は大幅に違う。同じオイルが5倍の容量なのに、価格は3、4倍となり、半値近くで購入できるケースもある。さらに銘柄は違っても、同程度の性能を確保できればいいのであれば、半値以下で購入できることもある。
ネット通販で20L缶を見比べれば、ベースオイルの種類や粘度レンジ、APIなどオイルの品質規格グレードで、同程度のオイルをいくつも探し出すことができる。
ここで気をつけたいのは、「高いオイル、粘度レンジの幅広いオイルほど優れていて自分のクルマに合っている」とは限らない、ということだ。そのクルマに合ったオイル、走り方やクルマの使い方に合ったオイルというものが存在する。
エンジンオイルの主成分となるベースオイルにも種類がある。HIVIとも部分合成油(鉱物油を高度水素化分解したオイル)とも言われるグループIIIのオイルは、コスパが良く、潤滑性能も高い。闇雲にグループVI以上の化学合成油を使えばいいというものではなく、純正オイルを早めに替えるだけでも好調さを維持できる場合も多い。
エンジンの冷却水の交換は、エンジンオイルほど重要ではない。ただし補充や希釈に水道水を使うのはNG。クーラント復活剤を2年ごとに入れるだけでも錆を防ぎ、泡立ちを抑えて冷却性能を確保してくれる。それでもラジエターのチューブ内の目詰まりなどを防ぎたいなら、最低でも4、5年に1度はクーラントを交換してやろう。
交換時にはフラッシング剤を注入してアイドリングか少し走行して、内部の水路にこびり付いた水垢などの老廃物を剥がして冷却性能を復活させたい。
クルマに乗らなすぎ、チョイ乗りばかりもNG
ガソリンが高い、税金や保険料も金額が大きいと、クルマの維持費が大きな負担になる。そのためクルマをなるべく使わないようにするのも節約の一つと思いがちだ。けれどもクルマなどの機械は、動かしていることで好調さを保っている部分もある。
ディーゼル車はデポジットでインマニが詰まる。直噴であることも原因だが、ゴーストップを繰り返すような走りも大きな原因となる。
ガソリン車でもポート噴射であれば、ガソリンに含まれる清浄剤や添加剤などで吸気ポートのデポジットを解消させることも狙えるが、直噴では吸気ポートへの吹き返しがデポジットを形成するので、分解して洗浄しなければならないのはディーゼル同様だ。
エンジンの健康状態を保ちたいのであれば、半年に一度のオイル交換と月一のドライブは欠かさないことだ。ゴム類劣化、バッテリー劣化を避けるにも、クルマを運動させてやることが大事だ。
自分の使い方に合ったクルマを選ぶことも大事。ハイブリッド、PHEV、ガソリン、ディーゼル、EV、FCEV。パワートレインだけでも、こんなに種類があり、ブランドや車種によりさらに細かな仕様の違いが存在する。パワートレイン別に乗り方使い方に合ったクルマの選び方は、別記事で解説しよう。