インテークチャンバーを追加するキットが登場
エンジンを中心とするパワーユニットは、クルマの走りの個性を決定付ける主要機関だ。クルマ好きは、エンジンの特性にことさら執着する。パワーやトルクなどのスペックはもちろん、アクセルペダルの踏み込みに対するエンジンの反応や音の良し悪しも気になるものだ。
だからこそスポーツマフラーに交換したり、スポーツクリーナーへと交換するなど吸排気のチューニングを施し、好みのサウンドやレスポンスへと仕上げたりするのだ。
そんな吸排気チューンの常識を超えたニューアイテムが、ガレージベリーのインテークセルキットだ。これはエアクリーナーとスロットルボディの間にチャンバー(膨張室)を設け、エアクリーナーの濾過抵抗を経た空気を溜め込むことで、瞬発力とトルクアップを実現するアイテム。
ちなみにガレージベリーは老舗のエアロパーツメーカー。そこがなぜチャンバーというチューニングアイテムを手がけるようになったのか、そこから気になってしまった。
「きっかけはF1関係の仕事もしている企業にも協力するパーツメーカーさんから、インテークチャンバーの効果を教えてもらったことでした。バイクでは常識のトルクアップを果たすアイテムと聞いて、クルマにも有効なんじゃないかと思って開発を始めたんですよ」とガレージベリーの中根社長。
インテークチャンバーはオートバイ、それも2サイクルエンジンなら常識のアイテム。吸気の脈動を利用してエアクリーナーやキャブレターの上流に空気(混合気)を溜め込んで、加速時に利用することでトルクアップを果たすものだ。
そんなインテークチャンバーの効果を知った中根社長は、クルマにも効果があるハズと思い、開発に着手。試行錯誤を繰り返してGR86/BRZ(先代86/BRZ用もアリ)用のインテークセルキットをリリースしたのは昨年のことだ。
その効果ぶりは別記事(https://effectcars.com/intakechanber/)を見てもらえば分かるとして、その効果の高さから、他車種にもとラインナップを拡大することにしたのだが、そこでまず選ばれたのがマツダ・ロードスターなのであった。
ガレージベリーはエアロパーツメーカーとして、国産車/輸入車用に幅広い車種のエアロパーツを用意しているが、その中でも特に力を入れている車種の1つがロードスター。運転が楽しく、控えめなエアロを追加するだけでスタイリングも引き締まって、走ることが俄然楽しくなるクルマだ。
かつては中根社長自身もロードスターでレースに参戦し、現在のガレージベリーはロードスターのワンメイクレースである富士チャンピオンレースの大会スポンサーとして名を連ねる存在なのである。
最近では車検対応ながらスタイリングのインパクトを高める「なんちゃってワイドフェンダー」などアイデアとデザイン性を両立したアイテムもリリースしている。つまりはロードスターのボディメイクに関してはお手のものなのである。
現行のNDロードスターでは、先ごろ大掛かりなマイナーチェンジを受けて、エンジンの最高出力が4psほどパワーアップした。これは日本のハイオクガソリンに特化してECUのセッティングを煮詰めた結果、達成したもので、マツダのパワートレイン担当エンジニアが念入りに仕上げたのだから、ノーマルエンジンの限界と言ってもいい。
ところが、ガレージベリーのインテークセルキットは、そんな新型のスペックを簡単に上回るほどの効果を示すのだ。その証拠に、製品版のインテークセルキットを装着した従来型のNDロードスターは最高出力を5ps向上させることが、パワーチェックで明らかになっている。
ここに至るまでには何種類もの試作品を作り、パワーチェックしてトルク特性も確認して最適な容量と構造を選び抜いているのだ。
しかも取り付けもエアクリーナーボックスを加工するだけと、非常に簡単なものでノーマルに戻すこともできる(エアクリーナーボックスに開ける穴を塞ぐ必要はあるが)。
インテークセル本体の取り付けはエアクリーナーボックスとスロットルボディをつなぐインテークパイプにある穴に差し込む。ここは本来、エンジン内部の圧力を逃すブローバイガスのリターンホースがつながるところだ。すでに空いている穴を上手く利用することで、取り付けを容易かつ確実なものとしている。
取り外して行き場がなくなったブローバイのリターンホースは長いモノに交換してエアクリーナーに穴あけ加工して取り付ける。エアクリーナーボックスの上部には、吸気の流速を高める整流板も取り付けるから、ネジ穴の加工も必要だ。
DIY作業に慣れている人ならば、取り付け作業は1時間もかからないだろう。したがって整備工場やカー用品店に取り付けを依頼しても、工賃はそれほどかからないはずだ。
インテークセルを取り付ける前のNDロードスターも十分に運転が楽しいクルマだ。1.5Lエンジンはパワフルという印象ではないが、軽い車体を走らせるには十分なトルクがある。燃費もスポーツカーとは思えないほどいい。
そしてインテークセルを取り付けた後は、そこから俊敏さが加わった。エンジンのレスポンスは変わらないが、実際に駆動がかかった時の反応が鋭くなったのだ。これはインテークセルが空気を蓄えて、加速の瞬間に吸気抵抗を軽減しているからだ。
加速Gを計測してみても、ノーマルとの違いは明らか。2速、3速の2000rpmからの加速は2割は強くなっている。シフトワークがますます楽しくなるだけでなく、加速時間を短縮して巡航に移れるので燃費をさらに高めるような走りも可能だ。
NDロードスターのもっている特性を一つも損なうことなく、加速力や燃費を向上させてくれるのだから、幅広いオーナー層に歓迎されるだろう。MTはもちろんATでも、その走りが俄然楽しくなる。
純正形状のスポーツクリーナーやスポーツマフラーへの交換など吸排気チューンを施したパワーユニットであれば、さらに効果が望めるはずだ。
このインテークセルキットは2Lエンジンを搭載したRF用も用意されている。価格はどちらも3万5200円だ。今後はさらにターボ車用も開発して対応車種を増やしていく方針だから、他車種のオーナーも楽しみにしていてほしい。
取材協力:ガレージベリー