今年もマツダはスーパー耐久選手権(以下S耐)にワークスチームとして参加する。それはシリーズチャンピオンやクラス優勝などの成績を求めるのではなく、クルマのミライを追求することを目的にした挑戦である。それはドライバーのミライを切り開くための活動でもある。
そのために選んだ3つのアプローチ。1つはMAZDA3のSKYACTIV-Dを使い、ディーゼルの次世代燃料を開発し、その適合を進めること。2つ目はガソリンに代わるCNFを使い、同じくガソリンエンジン用の次世代燃料を開発すること。3つ目が全国のロードスターワンメイクレースでのチャンピオンをプロドライバーの世界へとステップアップさせる「チャレンジプログラム」だ。
チャレンジプログラム以外でもマシンの操縦をプロのレーシングドライバーだけに任せるのではなく、社内のテストドライバーにも参加させることで、極限状態での走行、未来につながる開発への参加を体験させている。
やはり一番期待を集めるのは、ディーゼルエンジンを搭載したFFマシンという異色のMAZDA3だ。ノーマルでは美しいボディが、ワイド化と精悍なカラーリング、エアロパーツにより戦闘的なムードが全身から放たれている。
チーム代表の前田育男氏に、開幕戦に向けてマシンの仕様変更などがないか尋ねたところ「ちょこっとだけ変えてきました」と答えが。詳しくは話せない内容なのか、話すほどの内容でもないのかは分からないが、2023年シーズンを経て、さらにシーズンオフのテストも行なったことでマシンはさらに進化しているようだ。
今年は開幕戦のサーキットに、コース幅がやや狭くテクニカルなコーナーが続くスポーツランドSUGOということが災いし、55号車のMAZDA3がアクシデントに巻き込まれてしまった。
3台のマツダ車は順調に周回を重ねていたのだが、ちょうど半分の2時間を過ぎる頃、黄旗による追い越し禁止とその解除により参加車両が過密状態になった部分で接触事故が発生、外側にいたMAZDA3は押されてスピン、コースアウト! 幸いダメージは軽症で、ピットに戻り修復を経て再びコース上へと戻ることができた。
今回もSUGO戦は2つのグループに分けて決勝レースを行うことで、コース上のマシンの台数を抑えて競われたのだが、やはりこうした事態も起こり得るのだ。
「セーフティカー解除直後の混戦で、速度差のある車を抜く際に3ワイド状態となり、中に挟まれた車が55号車の右後方フェンダーあたりに接触した為スピンしたものと判断し、レーシングアクシデントと考えています」(木田努マツダスピリットレーシング チーム監督談)。
12号車のNDロードスターRF CNFについては、さすが2LのRF、しかもCNFも2年目とあって弾けるような排気音を響かせ、目一杯コーナーを攻め込む熱い走りを見せつけてくれた。
しかし後半はトランスミッションを労わりながら走行しているようにも見えた。ノーマルの6速MTでは、やや耐久性も気になるところだが、そうした部分を鍛えていけるのもS耐ならではだろう。
「12号車は今回Newボディーに変更し、今年東京オートサロンで発表したMSpRコンセプトカー仕様での出走となった。変更点も含め性能は育成途中ではあるが、SUGOのレースにおいては計画通リの走りができ無事完走。次戦の富士24時間に向けて機能、性能共にアップデートして、24時間完全に走り切っての完走を目指し、2台揃ってチェッカーを受けれるように準備を進める」(木田努マツダスピリットレーシング チーム監督談)。
120号車については、まだまだ伸び代しかない、そんな可能性を感じさせる戦いぶりであった。これからシーズンを通じて、どれだけ成長するか楽しみである。