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【君はついて来れるか?】開発者に訊いた「知れば知るほど難解なテインEDFC5というデバイスの奥深さ」

インタビュアー:高根英幸(以下、高根)

まず伺いたいのは、Gセンサーによる可変制御は前後Gと左右Gのみの設定になっていますが、上下Gに関しては検知していないんでしょうか?

テイン開発課 渡邊宏尚氏(以下、渡邊)

はい、その通りです。

高根

そうなると走行中に路面から突き上げた時、制御が入るのは前後とか左右Gが激しいと認識しているのでしょうか。

渡邊

はい、大枠で言うと認識としては近いところはあります。実際に入力が入った時って、クルマはどちらかにロール姿勢を取ってます。

それと、前にノーズダイブしたり、スクォートしたりっていう動きをした上下の入力が入ってるんです。それを横Gとか前後Gっていう風に認識して、減衰が高まってるという風な制御になってますが、実際に上下のZ方向のG制御は入ってません。

右はテイン開発課の渡邊宏尚氏、左はテイン営業課広報係の石野秀一氏

高根

加速度センサーって三軸を検知してるじゃないですか。クルマが結局揺れた時に、上下の動きの横の揺らぎが横Gとか前後Gとして入力されるっていう認識ですか?

渡邊

はい、そういうことになります。

高根

なるほど。これ、上下Gを使わない理由っていうのは何かあるんですか。

渡邊 

上下Gを使って制御するっていうところまでは、EDFC5開発の時は考えてませんでした。ただ、EDFC5を開発したことで、高根さんが今おっしゃってたような制御ができるってことは逆にわかりまして。

前後G、左右Gと上下Gを完全に分けて制御できるんじゃないかっていうことを(大きくは言えないですけど)やり始めています。

高根

つまり、EDFCはさらに進化すると? それって、そのファームウェアとかのアップデートとかで対応できる可能性あるんですか。

渡邊 

いえ、これは機能が大きく進むので、商品としては全く別物として出したいと思っています。

高根

なるほどですね。EDFC5ってなんて言いますか。最初に乗って思った時に、非常に競技志向の強い、スポーティー志向の強い電子アクセサリーだなという印象を受けたんですね。

でもホームページで解説見ると、乗り心地にもなんか聞くような。最初ミニバンを使ってたりとかしてあるんですけど、実際には車体をできるだけフラットに保とう保とうというような。そういう意図が感じられるような制御だなと思ったんですけど。

でも乗り心地を上下G、Z軸のその上下Gを入力に使えるとなると、まずは入力があった時に、もしできるんであれば、減衰力を下げて足を動かしてあげて衝撃を吸収して、その上で減衰を高めて、なるべく早く減衰してあげるっていう方がベストではないかなと思うんですけど、渡邊さん、その辺はどう思います。

渡邊

それがちょっと難しいところなんです。やっぱり入力が入った時に足がスッと動いて、伸びる時に逆に減衰を締めてあげた方が、いいような印象なんですけど。クルマの上側って、足が動いてバネが潰れてから上が動くんですよね。

高根

そうなりますね。

渡邊 

足から縮むと同時に車が上がってるわけじゃなくて、縮んでその反力でクルマが上がるんで。はい、この縮む量を減らしてあげた方が、実際の車の上屋の動きが小さくなるんで、乗り心地が良くなるんじゃないかっていう解析もできるんですよ。

なので、衝撃が入った時に、うん、減衰を緩める方法と、入った時減衰を逆に高めて、伸びる時に緩めてあげる、その両方が効果としてできるパターンがあるので、それをどっちにすべきかっていうのを今検証してるところです。

実は私は高根さんと同じ意見だったんですけど、実際に解析してみると、潰れない方がクルマの動きは小さくなって乗り心地良くなる結果なんです。

ただ、瞬間的なGが高くなるんで。ええ、Gに対しては人間は不快に思っちゃうから、それは乗り心地悪いんじゃないかと。

高根

私はそう思います。

渡邊 

そのロジックと官能評価っていうところのアンマッチが今あると思っています。私は高根さんと同意見でした。それが実際とは違うっていうことなんです。

高根 

うん、踏ん張っちゃったら当然そこで衝撃を吸収しないので、中にいる乗員にはそのまま割と衝撃が伝わるという風にイメージしちゃうんですよね。

渡邊

そこが私もその認識だったんです。大体の方というか、ウチの役員たちともその話をしてて、最初に入力入った時に減衰高めますって話したら、真逆じゃないのって言われたんですけど「実際はそうなんです」って話をさせてもらって。両方のモードでいろんな試験をして確認しています。

高根 

なるほどですね。そうですよね、僕なんかが思いつくことはもうとっくにやってますよね。

渡邊

そんなことないです。やっぱり机上と官能評価ってのはそれほど乖離はしないんですけど。やっぱりズレは出てくるので、そこをですね、どう近づけていくかってところが難しいとこではあるんです。

高根 

それと実際乗ってると、できるだけフラットにしたいんだろうなと減衰を高めるんですけど、時々なんかイニシャル(基準値)よりも減衰が下がってる瞬間を見ることもあるんですけど、これはどういうことなんですか。

渡邊 

G制御に関しては減衰を下げる方向には働かないんですけど、ジャーク制御の場合は旋回中に対角制御をしているので、例えば左旋回する場合は。フロントの外輪側の減衰を上げて内輪側は下げてるんです。逆にリアは外輪の減衰を下げています。

高根 

リアの外輪の減衰を下げてるんですか! 唯一、それがそのイニシャルよりも減衰力を下げる制御だと思っていいわけですか?

渡邊

はい。そういう風な制御をしてるので、イニシャルから減衰を下げる場合があります。

高根 

そうするとコーナーリング中でもなくて、ジョイントなんかの段差で受けた時にそうなったりするのは、多分瞬間的に左右にどっちかで入力の遅れがあったりとかして、それをジャーク制御がちょっとそういう風にコーナリング中と認識してしまうんですかね。

渡邊

減衰が下がる場合は、そうですね。

高根  

基本的には上がる方向でなるべくフラットにしたいんだなと思ったんですけど、すごく稀に減衰が下がった時があったんで、これはどうなんだろうと思ってたんですが、なるほどですね。

渡邊

コーナー入る瞬間にリアのアウト側の減衰を下げることで、腰くだけを起こさせてるんですよね。そうすることで、クルマが旋回する時のフロントのスリップアングルがついて、その後リアのスリップアングルがつくっていうのがクルマの旋回なんですけど、それを起こさせるようにしています。

そうすることで、クルマが旋回しやすくなるので、ロール角がどんどん浅くなってるんですよね。なので、クルマはどんどんフラットに乗れるようになるという制御がジャーク制御なんです。

高根 

考え方としては4WS(四輪操舵、とくに逆位相)に近い考えと思っていいんでしょうか。

渡邊

そうですそうです。はい、そんなことをやってます。それを考えてたのが芝浦工大の渡邊 大教授なんです。

高根

ああ、そうなんですね。そんなことまで考えてやってるんですね。すごいな。

渡邊

はい。それがまさかちゃんと製品化できるとはっていうところもあったんですけど、渡邊教授の研究の結果が製品化に繋がったっていうところですね。

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