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WECハイパーカーのボディ&シャーシを観察したら、2つのトレンドが見えてきた【後編】

CADILLAC V-Series.R

GMはIMSAだけでなく、欧州市場へのブランドイメージ浸透を狙ってWECへの参戦も始めた。これはWECがIMSA GTPとレギュレーションの共通化を図ったことも大きく影響しているが、これをチャンスと捉えた積極的な姿勢は評価すべきだろう。

マシンはダラーラ製のシャーシに5.5Lの自然吸気V8を搭載するという、ある意味潔いパッケージ。しかし速さではライバルたちに引けを取らない。これは扱いやすさというNAならではのパワーユニットのおかげか。

市販車でもエッジの効いたシンプルでモダンなテイストを基調としているキャデラックだが、そんなイメージをハイパーカーでも上手く表現している。

ジョーカーを使用してエボモデルとなったこともあって、2025年の第5戦サンパウロ6時間耐久レースで初優勝を獲得した。しかも1-2フィニッシュである。先日のWEC 第7戦FUJIでも予選はポールポジションを獲得。

キャデラックの速さは予選で何度もポールポジションを獲得していることから実証済みだ。しかし決勝での結果に今ひとつ結びついていない。だからBoPがそれほど効かず、予選での速さを維持しているという見方もできるのだが…。

キャデラックとモータースポーツはイメージとして結びつきにくい、という読者も多いのではないだろうか。しかし近年のキャデラックはスポーツセダンとしてニュルで開発してクルマを鍛えるなど、本気で走りの性能を追求する姿勢も見せている。

シボレー・コルベットとプラットフォームを共にするミッドシップのハイパースポーツを市販する、というプランもありえなくはない。そんな可能性すら感じさせてくれるのが昨今のキャデラックなのである。

FERRARI 499P

フェラーリといえば世界屈指のスーパーカーブランドであり、F1GPを長らく支えてきたコンストラクターだが、市販車では耐久レースへの参加も積極的だ。かつて60年代はル・マン24時間レースを6連覇したほど、圧倒的な強さを誇っていた。

イタリアらしい官能性と高性能を両立した市販車とレーシングカーにファンは魅せられ続けていたが、WECでもそんなイメージは変わらない。

そのためフェラーリはWECハイパーカーへの参戦も決めたのだろう。499Pは、かつての優雅なレーシングスポーツを想わせる優雅さとスピード感を持ったスタイリングと、速さを兼ね備えた鮮烈なデビューを飾った。デビュー戦こそホロ苦いものであったが、信頼性を高めていきル・マンでは優勝をさらうと、シリーズチャンピオンこそ逃すものの、3年連続でル・マンを制している。

マシンの特徴は低くスピード感高いフォルムと、LMHながらフロントのドライブシャフトや足回りなどの空力処理が速さを想像させる。V6エンジンのバンク間にタービンを収めたコンパクトで低重心と、効率のいいパッケージも特徴だ。BoPのおかげもあるのだろうが、しばらくはライバルに対して速さを誇りそうである。

ALPINE A424

アルピーヌはルノーのスポーツ部門として長らくル・マンに参戦してきた。ルノーがF1GPに集中していた時代は中断していたようだが、2010年代からオレカをパートナーに再びLMP2クラスに参戦。近年はWECハイパーカーに参戦していたものの、その実態はレベリオンのLMP1マシンだったが、昨年からオレカ製シャーシの独自マシンでLMDhカテゴリーに挑んでいる。

オレカ製のシャーシを使用していることから、これまでのオレカ製の特徴が残されている。すなわち低いノーズによる強調されたキャビンやシャープなシルエットで、それを実現するためにフロントの足回りもより低くマウントされるなど、他のシャーシにはない処理が見られる。

ただしロアアームは翼断面形状ではなく、通常のパイプ形状のようだ。そしてブレーキダクトもホイールハウス内の多くを占めていて、このあたりを通過する空気の流れはそれほど考慮されていないように見える。

それでも速さについては疑いの余地はない。今後の活躍が期待できるマシンの1台であることは間違いない。

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