リッター100psを超えている高性能エンジンが、こんなに安く手に入る!
かつてシビックタイプRが登場した時、あるいはモデルチェンジして新型が登場した時、その高性能ぶりに誰もが驚き、憧れたものだ。
それは軽量コンパクトなハッチバックに高回転型のスポーツエンジンを搭載することで、大排気量でよりハイパワーなクルマを相手に速さで勝負できる、そんな痛快なクルマに仕上げられていたからだ。
そんなタイプRのエンジンは当時、排気量1000ccあたり100psを実現していたことを誇りにしていた。市販車でそれを達成するには、単に高回転型の設計とするだけでなく、吸排気ポートを手作業で研磨して仕上げるほどのチューニングしていたほど、手間がかかっていた。そうしなければ達成できないほどの領域だったのだ。
最高出力というのは、そのエンジンが果たせる最高の仕事量ということ。例えば排気量が半分でもエンジン回転数が2倍なら実質的な排気量は同じ、つまり仕事量は同じことになる。エンジンを高回転化するのは同じ時間内に燃焼する回数を増やし、実質的な排気量を増やすことにつながるのだ。
しかし86/BRZに搭載されるFA20型エンジンは、それほど高回転型ではない。かつてのシビック・タイプRが2LのNAで絞り出していたのは225ps!だが、それは8000rpmであり、レッドゾーンは8400rpmからだった。一方、FA20は207psを7000rpmで発生し、レブリミットは7500rpmだ。つまり1000rpmも低い回転数で207psを発生している。
最大トルクはシビック・タイプRの21.9kg・m(215Nm)/6100rpmに対して、21.6kg・m(212Nm/6400rpm~6800rpmとほぼ同等のパフォーマンスを実現しているのである。しかし現在の中古車価格を見れば、86/BRZは後期モデルでも150万円前後から手に入るのに対し、シビック・タイプRで200万円以下の個体は走行15万km前後が常識。
15年落ちが中心となるため走行距離が進んでいるのは致し方ないが、10万km以下のクルマを買おうとすれば250万円は必要で、走行5万km前後の本来のコンディションが維持されていると期待できる個体は300万円前後(つまり新車価格)が相場だ。
ちなみにFD2のタイプRで最も高価格なモデルは500万円近い。86/BRZでは限定車やコンプリートカーを除けば、最も高価格なモデルでも300万円台前半。走行1万km以下の新車のようなクルマでもこのレベルだ。
300万円以上の費用を投じても15年落ちのクルマを買いたいのなら、それは個人の趣味だから構わないが、86/BRZなら100万円安く6年落ちくらいのクルマが手に入る。この差は大きい。この10年近くの間に、クルマは大きく進化しており、シャーシの洗練ぶりは素晴らしいものだ。
何より前後バランスに優れたFRスポーツらしい素直で俊敏な動きは、FFスポーツでは決して得られない、気持ちのいいハンドリングを味わいたいならFRスポーツが一番なのである。