煽り運転を誘ってしまう運転とは
煽り運転は、厳罰化されているにも関わらずなくならない問題です。これは、煽り運転の罪を知らないのではなく、自分自身が煽り運転をしているという自覚が欠けているためかもしれません。
クルマは、操作方法ひとつでトラブルの原因になってしまいます。実際、煽り運転をするドライバーの中には、日常のストレスをクルマの運転で発散しようとして、周囲のドライバーに攻撃的な行動をとる人もいます。
ヘッドライトの点滅やハザードランプの点灯などで他のドライバーとコミュニケーションをとろうとする気持ちは分かりますが、煽り運転はまさに「クルマによる暴力」です。もし「車同士が接触していなければ問題ない」と思うのであれば、街中で金属バットを振り回しても、誰にも怪我をさせない限り罪に問われないと言っているのと同じです。実際のところ、バイクや自転車、歩行者に対して幅寄せなどの危険行為を行うだけで、暴行罪として処罰されるのです。
免許を持っているにもかかわらず、そんな当たり前のことを理解していないドライバーが存在することは本来異常なことです。私たちドライバーは、もっと運転の責任を自覚するべきです。教習所も、こうしたことを厳しく教えるべきです。
一方で、煽り運転を受けるドライバーにも問題があります。まず、車間距離をきちんと保てていないドライバーが非常に多いことからも、危機意識や責任感の欠如が伺えます。煽り運転をするドライバーが悪いのは明らかですが、そうしたドライバーに刺激を与えてしまうような運転をするドライバー自身も見直す必要があります。
適切な車間距離を保つことは非常に大事
本来、車間距離は安全のために必要です。しかし、車間距離を空けすぎることにも弊害があります。
車間距離が広すぎると、後続のドライバーはイライラしてしまうことがあります。特に片側2車線の道路では、車間距離を空けていると隣の車線からクルマが次々と割り込んできてしまうことがあります。これによって後続のドライバーは損した気分になります。そのため、前走車のドライバーに対しての怒りや煽り運転のトリガーになることもあるのです。
このような状況や後続のドライバー、対向車に対して配慮ができないドライバーは、残念ながら一定数存在します。他にも制限速度を守って追い越し車線を走り続けるなど、周囲の状況を把握できないドライバーもよく煽られる対象となります。
自動車教習所では高速道路では速度と同じ数字のm分だけ車間距離を開けるように教えています。しかし、実際の高速道路ではそれほどの車間距離を空けることは現実的ではありません。ルールを守るだけでなく、円滑な交通を考える必要もあります。
欧州では車間距離は実際の距離ではなく、時間で考えることが主流です。たとえば、2秒の車間距離を空けることが一般的です。この時間は前走車がブレーキをかけたのに気付いてから制動力が立ち上がるまでの時間と、1秒間の制動で速度がかなり低下することに基づいています。
車間距離が2秒程度であれば、後続のドライバーがイライラすることは少ないはずです。もちろん、せっかちで車間距離を全く空けないドライバーにはこの限りではありませんが、一般的にはこの距離を守ることが望ましいです。
車間距離や車速に関する感覚を取り戻そう!
しかし、日本の高速道路での交通量が多い時の車間距離の少なさは、ちょっと異常ではないでしょうか。周りのクルマが同じ速度で走っているから、80km/h前後のスピードでもまるで市街地をゆっくり走っている時みたいな車間距離(15m未満)で走っています。
こんな光景は、首都高速でも見かけます。渋滞している訳ではなく、結構なスピードなのに車間距離をほとんど空けないで集団で走っているのだから、危険極まりないのです。
もし「ウチのクルマには自動ブレーキがついているから大丈夫」と思っているなら、それは二つの意味で危険な考えです。まず一つは、自動ブレーキ、正式には衝突被害軽減ブレーキは限られた範囲でしか働かないことを知っておくべきです。さらに速度や天候などによっては作動しないこともあります。
そしてもう一つは、衝突被害軽減ブレーキが作動しても衝突を避けられないことは多いのです。それらの安全装置が作動していても、ドライバーが交通事故の全責任を負うことになります。つまり、衝突被害軽減ブレーキはドライバーのミスを補うもので、基本的にはドライバーが急ブレーキなどで衝突を回避する操作をすることが前提なのです。
最後に、煽り運転を避けるためには、どうしたらいいでしょうか。「君子危うきに近寄らず」という考え方で、危なそうなクルマ(ドレスアップしていたり、動きが怪しいクルマなどで、なんとなく分かるかもしれない)が近くにいたら、変に刺激しないようにした方がいいでしょう。
相手はイライラしているかもしれないからからです。ドライブレコーダーを装備するのも大事ですが、クルマの後ろに「ドライブレコーダー録画中」のステッカーを目立つように貼ることと、周りのクルマの流れに合わせた走行をすることが基本です、自衛のためにも。