ガレージベリーのインテークセルキットは、これまでZC6型のBRZ、NDロードスターで試乗し、その効果をレポートしてきた。そこで、GR86では、どのような効果が得られるのか気になるところ。
というのも、このインテークセルキットは単に最高出力や最大トルクが向上する、といいうだけのアイテムではないからだ。これまでの効果から、エンジンに対してどのような影響を与えているのか考えてみよう。
エアクリーナーとスロットルバルブの間をインテークパイプで連結しただけの従来の吸気系では、アクセルを踏み込んだ瞬間にエンジンが空気を吸い込もうとした時にエアクリーナーの濾過抵抗からインテークパイプ内の圧力が下がり、空気密度が下がってしまうことになる。
ところがスロットルバルブとエアクリーナーの間に膨張室を設けると、スロットルが開いた瞬間に膨張室内の空気も引っ張られるため、圧力低下はその分抑えられる。密度の高い空気が吸い込まれるので、その分燃料も燃えてトルクが高まるのだ。ちなみにGR86/BRZはノーマルでも小さなインテークチャンバー(膨張室)が備わっている。インテークセルキットは、その容量を効果が最大限となるよう調整したものだ。
しかもエンジンの回転上昇が速くなることで、膨張室の空気とインテークパイプ内の空気を吸い込む勢いも高まる。これを最大限利用するために膨張室の出入り口とエアクリーナー内に整流板を追加することで、エアクリーナーを通過した空気の流速を高めて、エアクリーナーエレメントの抵抗を減らす効果も狙っている。
ちなみに純正のインテークパイプがゴム製で蛇腹状に凸凹しているのは、エンジンの振動を吸収するのだけが目的ではなく、パイプの壁面に沿って空気が流れてしまうことで吸気量の計測を難しくさせてしまうのだとか(某自動車メーカーエンジアからの情報)。
レーシングサクションなどスムーズな形状にしている方が、吸気抵抗が低くパワーが出ると思いがちだが、これはピークパワーこそ高まるかもしれないが、実際の走行時により速さに直結する加速力ではどこまで貢献しているかは難しいところ。なぜなら中速トルクが痩せていれば、その上の回転数域ではより盛り上がりを感じるので、自動車メーカーも意図的にそういった味付けをしているケースも少なくない。
今回、GR86にインテークセルキットを装着して感じたのは、ZC6のBRZ(86でも同じ)では感じた2000rpm~2500rpmの回転数域ではそれほど効果が出た印象はなかった、ということ。これはつまり、その回転域では空気は不足していない、ということだろう。
その証拠に、より高い回転数である3000rpmからアクセルを踏み込んだ瞬間の加速力の増大は驚くほどで、思わず「うわッ」と声が出てしまったほどだ。しかもこれが1速や2速ではなく、3速でのことなのである。
公道ではこれ以上の回転数、ギア数ではちょっと試せなかった(高速道路上なら可能だ)が、これは追い越し加速やコーナーからの脱出時には、絶大な効果を発揮するはずだ。
ダイナパックでエンジン性能を計測した結果、2500rpmからトルクが増大し、最大トルクで1kgm、最高出力で10ps向上しているというが、実際の走りではそんな数字以上に加速力の向上を体感できる。
GR86/BRZにも過給機を追加するキットもあるが、エンジンや駆動系の耐久性が気になるし、費用もかなりかかる。このインテークセルキットなら、他の吸排気系チューンにプラスすることで手軽に加速力を高めてくれるし、ノーマルに戻すのも簡単だ。