モーターは電導率の高いコイルで、回転させるだけ
エンジンは燃料と空気を取り込み、圧縮してから燃焼させることにより、大量の熱エネルギーを生み出します。しかし、現在の状況では、燃料のエネルギーの半分も駆動力として活用できていません。
一方、モーターは電気のエネルギーの約90%を駆動力に変換できると言われています。
では、なぜこのような差が生まれるのでしょうか?それを説明していきましょう。
モーターは、電流をコイルに流すことで電磁力を生み出し、磁力の吸引や反発などの作用を利用して駆動力を発生させます。コイルは高い電導率を持つ銅で作られているため、消費電力に対する損失が非常に少ないのです。しかし、発進時や急加速時などの高負荷状態では、抵抗となります。
つまり、高負荷時には電力を消費するだけでなく、抵抗として熱エネルギーとなってしまいます。それでもモーターの発熱はエンジンほどではなく、冷却機構は備わっていますが、エンジンほど積極的に冷却する必要はありません。
実際には、モーターへの電流供給は、PCUによって電圧、電流、周波数などが変換されるため、そこでも損失が発生します。さらに、バッテリーへの充電に使用された電流が全て蓄えられるわけではなく、エンジンと比べると少なくて済むのです。
エンジンは燃焼エネルギーを捨てている
一方、エンジンは燃料の持つ熱エネルギーの大部分を捨てています。4サイクルエンジンは往復機関なので次の燃焼のために、燃焼によって生じた熱エネルギーを全て駆動力にすることができず、排出しているからです。また、高速で動作することによる摩擦熱なども発生し、それをオイルや冷却水で冷却(つまり熱を捨てる)しています。
ただし、EVの場合、車両のエネルギー効率だけで判断することはできません。車体やバッテリーの製造にはCO2が発生し、走行時に消費する電気を作るための発電時のエネルギー効率や送電ロスなども考慮する必要があります。現在、日本では火力発電所の割合が高いですが、最近の気候変動の影響で、火力発電所の新規建設は避けられています。